去年のGuilFest以来一年振りのストラングラーズのライブ。今回はイギリスではなくフランス、オランダ、ベルギーのフェスティバルへ行った。
印象に残っていることをピックアップして3箇所分まとめて簡単に報告したい。途中、国(編集注:写真も)が前後することがありますがご了承ください。
初日のフランスではとりあえずなんとか少しでも良い写真を撮らねばと一生懸命で、人ごみを掻き分け何度か場所を移動。それが結構忙しかった。そんなことをやっていて正直言って演奏に集中することができなかったのだけれど、音質はとても良かったように思えた。そうそう、途中ポールがステージ上でなにかにつまづいてコケそうになっていたのは覚えている。のちに「あれ、わざとかと思ったよ。」とJJに言われていた。ポールはステージ上で本当によく動くし、時々滑稽(失礼)とも思える格好もするのでメンバーもわざとかどうか判別不能なのか・・・
セットリストは3日間ともNC(ノーフォーク・コースト)ツアーとほぼ同じだが、ヘッドライナーではない時は多少曲数も少なくなる。でも今回は大きなハイライトがあり、それは新曲。
たった一曲だったが「OUTANOWT」という曲がセットリストに含まれた。これは「Something Out Of Nothing」という意味で、ヨークシャーあたりで上記のように言うらしい。最終的にどちらのタイトルでアルバムに入れるかはまだ未決定だそう。
この曲はNCにはなかったようなリズムでライブでのノリもなかなかいい。これまたイントロからベースの音の印象が強い気がしたが、なんと、途中2,3分のベースソロがある!
ストラングラーズの歴史の中でも初の試みで当然これは耳、目共に惹きつけられる。他の曲でも彼のベースは常に存在感があるがソロとなるとその威力全開。やはりリードベースと言われるだけのことはある。新譜も待ち通しいけれど、やはりこれはライブで聞きたいね、もちろんこの極東、日本で。
ベルギーにはイギリスからもファンが来ていたようだが(彼らは盛り上がり方、「合いの手」の入れ方で識別できます)、このベースソロでは彼らの間でも“おお~っ。”とどよめきが起こっていた。No More HeroesやI don’t Agreeなどイントロでベースがフィーチャーされる曲もあるが、曲中でしかもある程度の長さでアタックのきいたキレの良いソロというのは、何十年もストラングラーズを聞き続けている年季の入った地元のファンにとっても聞き応えのあるものなのだろう。
フランスとベルギーはいわゆるミュージックフェスだったが、オランダはモトクロスあり、音楽あり、というとても大きなイベント。この日は控え室にちょっとお邪魔させていただくことができた。控え室、といっても野外にも椅子やテーブルがあって皆そこにいたのだが。
これはライブレポート、ということで書いているが、バックステージでの皆の様子も滅多にみることができないのでここで少しお話しよう。
彼らは出演時間よりだいぶ早く到着したらしく、サウンドチェックも終わりメンバーもクルーも皆夏の日差しを浴びながらくつろいでいる。
デイブは長かった髪を刈っていた!“暑くなるまで待ってた”そうだ。彼はなにか単行本のようなものとペンを持っている。よく見ると表紙に「SUDOKU」とかいてありそれは「数独」。“それをやると脳の訓練になるんだろ?でも記憶力は良くならないみたいだよな、デイブは記憶ゼロだから!”とはJJ。
デイブはたまに回りでおもしろいことがあるとそちらにも目をむけニコニコしていたが基本的に一人でずーーーーーーっとそれをやっていた。以前はクロスワードパズルにはまっていたらしい。デイブらしい。
そしてそんな彼が口を開いた時があった。それは誰かが栓抜きを探していた時。
“ほら、これ使えばいいよ!”といって脇に置いたバッグからびよ~んと紐に付いて出てきたのが栓抜き。キーホルダーかなにかについているらしく、バズがくれたんだと言っていた。
さて、そのバズだが、ビーチチェア?のようなものに座ってギターをつま弾いていたと思ったら、ある瞬間、椅子ごと転がってギターもろとも地面に落ちた。一体なぜそうなったのかは不明だが、みんなに大笑いされ、助け起こされていた。(バズが座っていてコケた椅子はイアン君が寝てたのと同じタイプのもの。なんと呼べばよいのかわかりませんが、いかにも安定が悪そう。)
ストラングラーズのメンバーで日本に来たことがないのは彼だけ。“是非とも行きたい!”と言っていたし、こちらとしても是非とも来ていただきたい。
ふと気づくと最初はいたジェットの姿が見えない。どこかで昼寝かな。。。
そのうちこちらでは武道の話になり私は仕掛け技のポイントを1,2種JJに見せたのだが、それが士道館空手では習わないものだったらしく新しいことを知った彼は大喜び。喜んで面白がっている本人はいいのだが、バズやクルーを相手に次々とそれを試すのだから練習台にされた方はたまらない。“また~?もうやめてくれ~。”といいながらもやられるがままのクルー。あんなことを教えたからこっちが痛い目にあった、と叱られた。ごめんなさい。でもJJは平然と“これも当然クルーの仕事のうちだろ。“
いつも裏でストラングラーズと彼らのサウンドを支えるクルー、こんなところでも身体をはって仕事をしていた・・・
そんなJJも巨漢のツアーマネージャーにその技をかけようとしたら逆に腕を取られてしまった。そのあとJJが真剣に手首を押さえて痛がっていて、ライブ本番前なのでマネージャーも真顔で心配したが実はそれはJJの演技。彼も安心して2人で笑っていたが、
ほっとしながらもJJから軽くお返しの連打を浴びていた。JJ師範、なかなかの演技だったので映画も期待できそうだ。
そしてもうひとつ面白かったこと。
遅れて到着したポールにJJが“あのさ、ピーチズの...look over there. Where?のくだり、あの時はちゃんと特定の一人を指して歌えよ。おまえ、いっつもあさっての方向いて適当に指差してるんだから。”
そのあとのライブでは確かにポールは最前列あたりの人をきちんと指差していた。
ベルギーはイギリスのバンド、レベラーズ等も出演したフェス。このレベラーズのバイオリン奏者はNCアルバムのSanfte Kussでソロを弾いている。
会場はメインステージとダンスホールに分かれていたようだが、結構ギリギリに到着したのですぐにメインステージへ向かった。
先ほども触れたようにイギリスからもファンが来ていたが、ヨーロッパは近いので週末でもちょっと出かけられるのが私などにとっては実に羨ましい。
この日は会場のすぐ隣に4階建てくらいの住宅があり、その窓からオッサンがステージを見下ろしていた。それに気づいたポールが声をかける。オッサンを楽しませようと何度となくそちらを見て呼びかけ、その度にメンバーも観客もみんなオッサンの方を向くが当のオッサン、一向に反応しない。ポールは「楽しんでる?そういやあんたはチケット代も払ってないよね!」などとも言っていたがやはり無反応。英語が理解できなかったことも考えられるが、ポールの努力も空しく結局そのオッサンから何らかの応答を得ることは最後までできなかった!
この他にも観客が投げ入れたフリスビーをポールとJJが投げ返したりと、全体が終始とても良い雰囲気でメンバーも楽しんでいる様子がうかがえた。
時間の関係からかこのステージでは2曲ほどカットされたが、音とその振動が強烈で内臓がひっくり返りそうだった。音に関しては特に「タンク」のラストにデイブが出す爆破音、あれには思わず耳を閉じてしまった。デイブと言えばストラングラーズの音楽に欠かせない要素の1つである宙を渦巻くようなキーボードだが、彼は時に実に凶暴な音を出す。まあ最前列PAのほぼ真ん前にいた、というのも内臓にまで直接響いた原因だろうが、実はそのような物理的なものだけでなくステージ上の彼らから発せられるエネルギーが膨大なのだ。
確か前回のコンベンションの時にジェットが言っていた“この仕事は多分他の仕事よりも疲れるし早く歳をとる。”と。だが、こう言ったジェットを含め、3日間を通して彼らに疲れが見えたこともなければパワーが落ちることもなかった。それは単なる肉体的なパワーだけでなくメンバー個々が内から発するエネルギー、そしてそれがバンドとして一体になった時にさらに増幅されるエネルギーなのだと思う。
そのエネルギーを存分に受け浸透させて私はベルギーをあとにした。とても熱い数日だった。
[セットリスト]
Norfolk Coast
Skin Deep
Big Thing Coming
Peaches
All Day And All Of The Night
Always The Sun
Long Black Veil
Golden Brown
Nuclear Device
Outanowt
Walk On By
Duchess
Lost Control
Who Wants The World
I’ve Been Wild
Grip
Tank
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No More Heroes
【All photos by Yuka Takahashi】
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